人材育成・採用
リハビリ医学の起源は電気刺激と電気診断に端を発する物理医学(Physical Medicine)にあります。Rehabilitation、すなわち再 (re)+適 (habilis) の用語が付加されたのは後になってのことです。米国ではリハビリ科が Department of Physical Medicine and Rehabilitation とも呼ばれる由縁です。その中心テーマは"dismobility" ですが、適切な邦訳が見当たりません。生活に直結する内容であり、原因の如何に関わらず、"動けないこと" と訳すのがいいかもしれません。麻痺や運動失調症がその中心ですが、心肺系の障害による運動耐久性低下や高次脳機能障害による行為の異常も含まれます。 疾患としては、1)脳卒中、その他の脳疾患、脳外傷、2)脊髄損傷、その他の脊髄疾患、3)関節リウマチを含む骨関節疾患、4)脳性麻痺を含む小児疾患、 5)神経筋疾患、6)切断、7)呼吸・循環器疾患があります。リハビリ医学の守備範囲は広く、"dismobility" が絡んだ問題であれば、社会医学の側面まで含まれることになります。 |
リハビリテーション科医は社会から求められています。
①必要医師数倍率が基本診療科中最大
2015年の日本医師会の調査で、リハビリテーション科医は救急科や産科を抑え、最も必要医師数倍率が高い診療科(1.23倍)であると報告されました。ただし、これは標榜科をリハ科としている医師をベースとした値であり、専門医の需要は②に挙げるようにさらに逼迫しています。
②回復期リハビリ病院だからといってリハビリテーション科専門医がいるとは限らない
2017年の日本リハビリテーション医学会の報告では、回復期リハ病院に勤める専門医数はわずか195人にすぎません。現在稼働している回復期病床約40,000に対して、必要数は1,800人と推計されており、必要数に遠く及んでいません。
また、民間団体 病院情報局の調査で、全国279のリハ病院のうち、専門医が1人以上所属する病院は160に留まっていることが報告されています。つまり、専門医がいないリハ病院は4割以上に上っているのです。このようにリハ専門医に対する社会のニードはたいへん大きなものです。
③杏林大学医学部リハビリテーション医学教室では、正統的リハ専門医の養成を行っています
本学は大きな医局ではありませんが、十分な数の指導医と専門医を擁し、一人ひとりに合った面倒見の良い教育プログラムを心掛け、十全な知識と技術を有する専門医養成を行っています。入局された先生は、基本的に専門医資格を取得できるようにいたします。
④リハビリテーションはAIでは代替できない心の通ったテーラーメイド医療
重度の"dismobility"を背景とした一人ひとり異なる身体能力や社会的問題に対して、リハチームは円満な転帰を目指した包括的医療を展開します。特に回復期では、数か月単位で、患者さんとともに回復の喜びを感じながら、患者さんの機能障害の可能な限りの治療と患者さんを取り巻く環境のテーラーメイドな調律を行います。
⑤リハ医の専門性
リハ医の”治療”・”調律”する対象は、疾患それ自体ではなく患者さんができること、患者さんの生活そのものです。医師としての学問指向性としては、神経生理学、運動生理学、学習理論、高度先進的リハにおいては脳科学などが基盤となっています。リハ科では他の専門家との協働が基本なので、狭く深くというよりも、どれも概略を心得ていることが肝要です。目標は患者さんを取り巻く種々の問題を文字通り総合的に良い方向に持ってゆくことです。
具体的業務内容は、次のようなものです。
・ゴール設定:最良の帰結について見通しを立て、医学的判断に立脚したインフォームドコンセントを行い、時間をかけて家族とすり合わせを行います。患者さんのその後の人生を決定しうる重いものです。
・リハの質の管理:経験症例数・協働する療法士数が単純に多い利点を生かし、患者さんごとのリハのダブルチェックを行い、リハの質の向上を図ります
・チームのマネジメント:前述の広範な知識を患者さんの治療に適応・応用するという点で、医師のオールラウンドな基礎知識と資格特性はマネジメントに向いています
・生活機能の観点からの他科への助言:病気を治すことだけではなくて「患者さんにとって」最良の転帰を目指し、各科の先生方をサポートします。本院では、SCU(脳卒中ケアユニット)、脳神経外科、小児リハ、骨転移、摂食嚥下、脳血管の各カンファレンスで関係科との密な連携を行っています
・薬物治療や装具療法:治療や緩和が可能な障害に対する治療も重要な役割です
・生活機能に関する検査:嚥下造影、嚥下内視鏡、膀胱造影、神経伝導検査、針筋電図検査
・先進的リハ:リハの革新を目指した研究をおこないます
・患者さんの激励
また、研究が進んでいない領域がたいへん広いことも特徴です。本学では、宇宙医学やリハ医療政策、ニューロリハ:中枢を標的とした経頭蓋交流電気刺激、末梢を標的としたClosed-loop式神経筋電気刺激などに取り組んでいます。宇宙リハや経頭蓋交流電気刺激を扱っている教室は、日本では本学だけではないかと思います。
単一の疾病に依らず、診療科横断的に 生活機能を評価し
医学的判断に基づいた チーム医療によって、
障害の解決を図る医学である。
人の生活在るところ リハビリテーション在り
専攻医は3名を募集しております。
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